自家中毒

たわごと置場。感想及び記録

映画「空母いぶき」感想

空母いぶき

※大いにネタバレあり

※憤り多め

 

公開初日(しかも舞台挨拶付き)に行っておいてなんなんですが。
この作品を観た感想として「何気ない日常をすごせる平和の尊さありがたさに感謝です^^」とか言えちゃう素直な人がターゲットであって、私のようなひねくれ者はターゲットじゃなかったのかなと。

期待しすぎていたのがよくなかったのかもしれない。
手に汗握る海戦、ばりばりの空中戦、緊迫する艦長と副艦長の対立、とか期待していたことが全部肩すかし!!
空母が観たかったのに、映画の3分の2以上は空母として機能してないって。ただのデカい旗艦でしかない。タイトル詐欺。

分かってる、予算がね。日本映画の予算は限られすぎてる。悲しい!!
でもさ、艦載機をエレベータで搬出→発艦、の流れとか魚雷装填シーンとか観たかったな~~
観れてよかったのは、各船のジグザグ航行の絵面と「いそかぜ」全般(主砲で攻撃、攻撃回避、「いてまえ~~」)です。

いっそ、自衛官による戦闘パートと文官による交渉パートのみに絞ればよかったのかな。
コンビニパートもマスコミパートもいらん。時間と役者さんの無駄遣い。

そもそもね、総理大臣なーんにもしてないから。なに最後にやりきった顔してんだよと。
政府がするべきは、「この行動は戦争行為か」の議論じゃなくて「戦争にしないために」手を打つことでしょー。
頑張ったのは外務省の人たちだから。彼らを主眼に据えて、ぎりぎり綱渡りな交渉の様子を克明にかつスリリングに描いてはどうだろうか。
東亜連邦の後ろにいるのはどこか、とかさ。(前半で、ミグのほかにステルス機もいる、みたいな描写を戦闘パートでしてたよね?)
どこがどういった利益で動くか探り合いして、他国の思惑で状況はどんどん変化して。正攻法も搦め手も使って戦争回避を目指す文官達。
文官だってそれぞれの戦場で戦ってますよ、と。

話に緊迫感を持たせるなら、まずはゴール地点の設定だよね。
安保理に話をつけて、相手国を引き上げさせる」を勝利条件として。
文官パートがそれを為すまで、海上パートは「自らは相手を致命的に攻撃せずに、相手の攻撃をしのがなければならない」が勝利条件。
相手はガンガン攻撃してくるから、それをどうしのぐか、いかに死傷者を出さないかが腕の見せ所になる。
そしたら、謎の潜水艦が現れて……!?みたいな。
文官パートで第三国の干渉(二国間の紛争に乗じて島奪取を狙っているところがある)の情報を小出しにしておけば観客もハラハラできるし。
いや、原作知らないのでそんなアレンジしていいのかは分かりませんが。
書いているうちに「シン・ゴジラ」を見本として想定してきちゃった……

普通に疑問なんですが、調停に来た機関がいきなり魚雷うってくることとかあるんですかね?
そして、安保理を動かした一つが変な動画、とかいらんから。
世界中で紛争戦争、今も山ほどありますよね。残念ながら、世界各国の人が動画を見たって心を痛める程度で、戦争止められてませんよねー?
なのに、やめて。あほみたいな動画で世界を動かした、みたいな演出。
ここで、ちょっとだけ残ってた観る気力が全て失せましたね。
そもそも作戦行動中に勝手に甲板に出る→勝手に撮影→勝手に送信する奴、海に沈めたくなるレベルです。

部外者も通行自由なガバガバ船内。
若くて可愛くて仕事はできるけど程々にアホ、という”おじさんの考える理想の女の子=本田翼”っていう図式も陳腐すぎて苦しい。
さりげに、「君がこの艦で唯一の女の子」とか言われてたような??
え、700人以上も乗組員がいて、女性乗組員一人もいないんですかー!??なにその設定。つらー。
まあ、政府にも女性いないみたいだったんで、女は飾りっていう世界なのだと思います。
パイロットが妻と小さい子供の写真を持っている、とかもベタすぎてびっくりしました。
謎のコンビニパートも、あんなに客来て忙しいのにのんびりカード書いてあげく眠りこけてる店長とか、殺意しか沸かなかったです。(役者は悪くない)
守るべき日常、は大前提なのだから、映画の中であえてしつこく描く必要はない。観客の想像力を信じていないタイプかな。
「世界は一つ」みたいな露骨なメッセージカードも興ざめ。

あとはなんかもう愚痴羅列します。

・初手で被弾→エレベータ全機故障、ってしょぼ!しょぼ!!
ミッドウェーの赤城ですらもうちょっと粘ったんじゃないのってくらいのしょぼさ。
ストーリー動かすためとはいえ悲しい……
そして出た、「修理にどれくらいかかる?」「24時間、いえ短縮して20時間」「12時間でやれ」
やりとり自体はかっこいいが、全然現実的じゃないダメ会話やっちゃいましたね。

・副艦長の言う攻撃しない理由=「(相手側)150人の命を奪えない」
……はあ?はあ??はあ??? それを前線にたってる立場で今更いう???
そりゃできるだけ命は奪いたくないでしょうよ。当たり前だ。でも、その立場で口にするのは馬鹿すぎませんか。(役者は悪くない。2回目)
せめて、「いま攻撃すれば相手に宣戦布告の大義名分を与える」とか「国際世論が向こうに傾く」とかでしょうよ。
あげく、相手を攻撃できない→自分たちに死傷者を出すパターン。
これについてもうちょっと葛藤してもいいんじゃないかな。大好きな人間ドラマの描きどころですよー!?

・ミサイルも魚雷も迎撃漏らしすぎじゃない??
実際あんなもんなんですか?だとしたら被弾しまくるんですか?(マジで分からない。有識者に伺いたいものです)
さらには、1発撃ち漏らしに対して取った方策が「身を挺して守る」→大破、って!!
いやいやいや。まだ作戦行動は続くのに。完全に戦略ミスでは!?
せめて当たりどころを考えてー。

・潜水艦も魚雷は撃てない→じゃあって特攻。
……メンタルが太平洋戦争から変わってないんかーいい!!
あげく中破で離脱。なんじゃそりゃ。

・結局海上で選択を迫られるのは、「自衛の範囲とは」ではなく、「今後の交渉で戦争に持ち込ませないためには、どう行動するべきか」なんだよね。
そんなのはどこの国でも慎重な判断が必要な部分であって、自衛隊に限った話でもないのでは。
しかし、日本は絶対戦争になだれ込むような真似はしない、とみなされているならば、つけ込まれる隙になりかねないということなのでしょうか。
そういう、どちらかというと改憲よりの問題提起映画なのかな?

・せめてもと期待して買ったパンフに、各艦のスペック紹介すらないのでがっかり大会でしかなかったです。

・空母だの犠牲者だのが出てくるから諸々大人の事情で自衛隊協力の名前は出せないのか、それともただ単に自衛隊が協力していないのかは謎ですね。